前立腺肥大症

前立腺は、男性の生殖器の一つで、精液の一部を造ったり、精液の中で精子の機能を良くするための環境作り、といった役割をもつと考えられています。

この前立腺が、年齢とともに大きくなってくることがあり、これが前立腺肥大症です。軽度のものを含めると、60歳以上の男性の約半数の男性に起こってくるといわれている病気です。

なお、この病気は良性の病気で、あとで述べる前立腺がんとの関係はありません。

最初に出てくる症状は、おしっこが近い、出るのに時間がかかる、切れが悪い、出る勢いが弱い、などですが、もう少し病気が進んでくると、排尿の後も膀胱に尿が残るようになるため、残尿感が出たり、場合によっては尿が漏れたり、腎臓に悪い影響がでてしまうこともあります。更に進行した場合には、全く排尿ができなくなる、「尿閉」といわれる状態になることもあります。

前立腺肥大症はすでに述べたように大変多い病気なのですが、全ての患者さんに治療が必要というわけではありません。ある程度症状が強くなった場合は、薬物治療を行います。薬物治療としては、症状をやわらげるためのアルファ・ブロッカーが主流ですが、そのほかにも漢方薬、生薬のようなものから、前立腺を小さくする効果のあるホルモン治療の薬まで、状態に応じていろいろな薬が開発されてきています。

状態によっては手術が行われますが、最近はおなかを切って手術をする場合は少なく、尿道から内視鏡を使って前立腺を削り取る方法が一般的です。さらに、高齢の方や、他に大きな病気のある方に対しては、温熱療法や、レーザー、超音波を用いた手術法なども行われるようになってきています。

前立腺癌

前立腺がんは、従来は欧米人に多く、日本人には少ないがんだと考えられてきましたが、最近日本でも急激に増加してきています。その原因は、生活様式の欧米化や、食生活にあるのではないかと考えられています。

前立腺がんの診断方法で、最近最も注目されているのがPSA検査です。普通の血液検査と同じように、採血するだけで前立腺がんの可能性の有無を判断することができます。この数値が4.0以下の場合、99%がんはない、といえます。一方、PSA値が10を超える場合は、40%の方にがんが発見されます。血液だけで検査できるこの方法は、急速に普及してきており、私のクリニックのある市川市も含め、各地の検診にも取り入れられてきています。

PSA検査に、直腸から行う触診、超音波検査、MRIなどを追加することで、早期の前立腺がんも、かなり正確に診断できるようになってきていますが、最終的に診断を確定するためには、生検といわれる検査が必要です。

生検の結果、前立腺がんがある、と診断されても、決して悲観的になる必要はありません。一般的に、前立腺がんは、他のがんと比べて非常におっとりした性格で、ある先生の報告では、がん細胞が一個発生してから症状が出る状態に成長するまで40年かかる、といわれているほどです。早い段階で発見して治療を行えば多くの場合、完全に治すことができますし、もしある程度進行してから発見された場合でも、ホルモン治療や、放射線治療などの方法があり、治療効果はほかのがんと比べて抜群です。
手術法も、お腹を切らずに腹腔鏡を用いて行ったり、手術用ロボットを使っての方法など、患者さんにとって負担や苦痛の軽い方法が開発され、年々進歩してきています。

前立腺炎

前立腺肥大症と前立腺がんは、いずれも高齢者の病気ですが、前立腺炎は、中学生でも起こりうるものです。細菌が原因になっているものとそうでないものもあり、重い病気ではないのですが、経過がぐずぐずする場合が多いのが特徴です。
下腹部や股間、腰などの鈍痛や違和感、頻尿などの症状があり、場合によって排尿や射精の時に痛みを感じることもあります。

最近が原因になっている場合は抗生物質を使いますが、そうでない場合は、生薬や消炎剤、漢方薬などが治療に用いられます。鍼治療などを試みている施設もあります。

長時間座った姿勢を続けることや、下半身の冷え、禁欲などが症状を悪くする場合があるようです。
いずれにせよ、細菌性のものなのか、そうでないのかの区別などのために、専門医の診察を受けることが必要です。特に、高熱が出た場合は、急性前立腺炎という重症な病気の場合がありますので、必ず泌尿器科医の診察を受けてください。